[今宵の1枚]安田南の1st「South」を聴く

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業者に頼んでデジタル化してもらった部屋の隅で埃を被っていた1974年リリースの1枚だ。
サブタイトルには“Yasuda Minami Live at The ROB-ROY”とある。
レコードプレイヤーを押し入れにしまってから針を落していなかったことを考え
れば、聴きなおすのもかれこれ軽く15年や20年近いご無沙汰なのである。

ご本人を前にしているわけではないので失礼を承知で記してしまうと「上手い!
なにこのボーカル!記憶以上に上手すぎ!」のただただ一言なのである。
「歌手安田南を全く知らない人の為に…」なんて30数年後の今を予期したかのよ
うなライナーノ−ツが奮っているので冒頭だけでもご紹介しておきますね。

『かなり熱心なジャズ・ヴォ−カル・ファンでも、笠井紀美子は知っているが、
安田南は知らない、という人が沢山いる。それならば、例えば、このレコードを
収録した、ロブ・ロイで、笠井紀美子が歌う日と、安田南が歌う日とではどちらが
大勢の客を呼ぶか、と云えば、これがどちらも同じ、満員になる。』

と書き出しにあった。所属事務所もなかった安田南のスケジュールなんてインター
ネットもまともに情報誌もなかった1974年では今より困難を極めたはずなのに、
安田南のファンは何処からともなく確実に集まってきたわけだ。
まだレコードを出していなかったにもかかわらずだ。

歌の上手さは当時「お行儀の悪いビリー・ホリデー」とまで言われていた安田南
だからわかるというものだ。歌っている最中に飴を舐めたり、ビールを瓶ごとラッ
パ飲みしたり、煙草もスパスパなのだからお行儀の悪さは有名だったらしい。
僕の知る安田南さんもいつも酔っぱらっていた時の方が多かった記憶がある。
新宿コマ劇場地下の「カーニバル」でもピアノの横でビールでフラフラしていたよ
うな気もする。

しかしデビューアルバムがライブ盤勝負とは随分と大胆な気もする。
念願のデビューアルバムならばスタジオで納得するまでテイクを重ね、中身も練り
に練って相当に作りこんだ作品を「これでどうよ!」とばかりに提示するアーティ
ストも多いと思うのだが、彼女の場合はちょっとしたお遊び感覚でライヴ録音した
としか思えない節がある。普段の場所の普段の雰囲気を大切にして「いつもこんな
感じよね」と笑っている気がしてならない。
ライヴ録音当日は15曲を披露したそうだがアルバムには8曲だけである。
もしかするとキングレコード(ベルウッド・レーベル)には残り7曲の音源も残って
いるのかもしれない。これだけの秀作なんだからCD化する時に特典で未発表の音源
も是非聴かせてほしいところだ。

ライナーノ−ツの“落ち”もリアルでいい。

『安田南はクラブで歌いながら節操もなくあちこちの雑誌に雑文を書いたり、作詩
したり、ディスク・ジョッキーで声をからしたり、遠くへ行ってみたりしている。
そういう彼女を見かけたら当局へ御一報下さい。何しろつかまらなくて困っている
のだから。』

とあった。携帯電話なんか無い時代だし、そもそもそんな物は彼女には似合わないに
決まっているし持たないはずだ。
だから所在不明としか思えない彼女のサード・アルバム「SOME FEELING」が奇跡
的にCDで出たけど「印税は南さんにちゃんと渡るのか?」と不思議でしょうがない。

[録音]1974年2月19日
[場所]Jazz Club“ROB-ROY”(青山ロブロイ)
[メンバー]Vocal:安田南
      山本剛トリオ(Piano:山本剛・Bass:福井五十雄・Drams:小原哲次郎)
Alto Sax:大友義雄
[収録曲]Side A
  Gravy Waltze(2:55)
Bye Bye Blackbird(4:00)
Good Life(5:49)
Chains of Love(8:17)
Side B
Summer Time(5:17)
Yes Sir That's My Baby(3:35)
I'm Walkin(5:48)
Good Morning Heartache(6:20)

PS.「South」…「南」…「浜松South高校」…おおっ我が母校じゃん!(笑)
そういえば最近の卒業生(後輩)に「South」ってバンドあったよな。


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