
過日、映画配給会社兼ミニシアター「アップリンク」のサイトで「映画『100,000年後の安全』が待望の書籍化!映画の内容をもとに、原子力問題の専門家が解説を加えて書籍化。今までメディアであまり報道されてこなかった、日本における核燃料サイクルや、放射性廃棄物処理の問題についても詳述」という情報を拾いました。
映画は4月の緊急上映時に見ましたし、その後に良く出来た800円の映画パンフレット
http://www.uplink.co.jp/100000/dvd.php#1872
も購入しましたが、新たに映画を再検証&補完する意味でちょっと気になる本でした。
「どんな本だろう?宣伝しているんだから、もう書店には並んでいるんだろうな?でも忙しくて大型書店に寄るヒマはないしね。ネット注文する前に手に取って確かめたいしね」と思って車を流していたら、明治通り沿いに人文系っぽい書店が目に留まりました。僕の大嫌いな「日本共産党」党本部前というか「日本共産党中央委員会」なんて厳めしい名前の新しそうなビルで赤旗が翻っている建物の正面反対側ですから、きっと日本共産党の息のかかった書店だとは思いますが、書籍には罪はないしね(笑)。
店内には原発関連の興味深い書籍がズラッと巨大な一角を占めていましたが、お目当ての本は見つかりませんでした。「売り切れ?まだ発売前?」と悩みましたが、店員さんは奥で忙しそうに電話に対応していたので声をかけてまで確認することもなく出てきました。
昨夜、福島第一原発2号機の臨界情報が気になって「原子力資料情報室」のサイトにアクセスしたら、ツイッターで見つけたのがコレでした♪
※CNIC 原子力資料情報室ツイッター
フィンランドの放射性廃棄物最終処分地をめぐる問題を追ったドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』が書籍化。当室の澤井正子、西尾漠が解説を担当しました。...
http://twitter.com/#!/CNICJapan/status/131588302355705856
あれ?例の本は10月24日には発売されていたんだと改めて知りました。
宣伝文は「2011年4月に緊急上映され、単館ロードショウながら全国74館に広まった話題の映画がついに書籍化!フィンランドで建設中の核廃棄物の最終処分場の抱える様々な矛盾を浮き彫りにし、原子力エネルギーに依存する社会に問題を突きつける。後半部分には日本で起こっている核燃料サイクル問題についての解説を収録。」とありましたので、どんな映画を扱った本かはわかりますよね?
小出裕章(京都大学原子炉実験所 助教)さんの推薦文として「10万年、人間の想像を超える未来。私たちはいま、その未来にいたるまで決して消えない毒物を生み出し続ける」ともありました。
映画はマイケル・マドセン監督作品で、2010年パリ国際環境映画祭グランプリ、2010年アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭 最優秀グリーン・ドキュメンタリー賞受賞、2010年コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭 有望監督賞受賞とそこそこ評価も得ています。
公開を見逃してしまった方には年末(12月23日)にDVDも発売されるようなので、その後にレンタル店で借りて見るのもいいけれど、本でじっくり読むのも悪くないかもね。
http://www.uplink.co.jp/100000/dvd.php#1871
≪目次詳細≫: 『100,000年後の安全』 [単行本(ソフトカバー)]
映画編
CHAPTER1 放射性廃棄物 NUCLEAR WASTE
原子力発電とは(西尾 漠)
放射性廃棄物とは(西尾 漠)
高レベル放射性廃棄物とは(澤井 正子)
CHAPTER2 中間貯蔵 INTERIUM STORAGE
中間貯蔵とは(澤井 正子)
CHAPTER3 恒久不変な解決法 THE PERMANENT SOLUTION
処分場に廃棄物が埋設されるプロセス(西尾 漠)
CHAPTER4 人間の侵入 HUMAN INTRUSION
CHAPTER5 未来への警告 WARNING THE FUTURE
CHAPTER6 法律 THE LAW
未来の人間による処分場への侵入と、その警告の方法について(西尾 漠)
日本編
CHAPTER7 未来へのメッセージ(西尾 漠 / 澤井 正子)
MESSAGE FOR JAPAN
核燃料サイクルとは
原子力発電の燃料とは
核燃料サイクルとは
核燃料サイクルの問題点
使用済み燃料の再処理(日本の場合)
再処理とは
再処理の危険性
原発1年分の放射能を1日で出す
六ヶ所村・東海村について
再処理は本当に必要なのか
高レベル放射性廃棄物の現状(日本の場合)
日本における高レベル放射性廃棄物
問題だらけの海上輸送
どのくらい危険なのか
どこに貯蔵されているのか
大量に残る再処理できない使用済み燃料
日本における地層処分
日本における地層処分
場所を決めることはできるのか
日本の高レベル放射性廃棄物研究施設
高レベル放射性廃棄物以外の廃棄物
低レベル放射性廃棄物とは
どこにどうやって処分されているのか
原発1基を廃炉にすると……
原子力発電からの脱却は可能か(西尾 漠)
映画『100000年後の安全』について
マイケル・マドセン監督
【「原子力資料情報室」(CNIC)】
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1228
【かんき出版『100,000年後の安全』】
http://www.kankidirect.com/np/isbn/9784761267872
映画『100,000年後の安全』≪緊急公開にあたって≫
「おカネ」より「モラル」を優先して生きる
4月2日に緊急公開した『100,000年後の安全』は当初アップリンクで1日1回岳の上映でしたが、今日、6月14日現在では70館以上もの映画館で上映されるようになりました。パンフレットもできていなかったのですが、6月17日から始まる福島フォーラムでの上映に間に合うかたちでやっとできます。以下の文章はパンフレットの編集を終えた時点であとがきとして書きました。
原発と高レベル放射性廃棄物の問題をできるだけシンプルに「おカネ(経済)」と「モラル(倫理)」という二つの面から考えてみました。原発が作られるところには莫大な交付金が渡されます。それは万が一のリスクと引き換えに「おカネ」を与えられるわけです。その地域においては「おカネ」がありがたいのであり、原発がありがたいわけでなく他の産業でもいいのです。この「おカネ」はよく考えると、先払いの生命保険のようなものではないでしょうか。そのような先払いの保険で得をするのは、後世の人ではなく現在の人だけです。せいぜい子供、孫の代まではその「おカネ」の恩恵を被ったとしても10万年とは言わず、1000年後の人には関係のない「おカネ」でしょう。今の世の中の大半の人は目先の「おカネ」に弱いものです。そのことをわかった上で、原発を作る地域の人に後世の人のことを考えなくさせる位の額を目の前に見せて原発を作るというのは「モラル」に反した行為だと思います。
また、原子力が生まれたときのことを想像してみます。未来のエネルギーを人類は手に入れました。ただ同時にそのエネルギーを得るときに出るゴミ、放射性廃棄物を無害化することはできませんでした。最も危険なゴミ、高レベル放射性廃棄物が無害になる期間がヨーロッパでは10万年、アメリカの基準では100万年にもなると計算されています。そこで人は「おカネ」のことだけを考え、このゴミ処理や万が一の事故を計算に入れなければ、原子力から得る発電は安いということで原発を作り出しました。放射性廃棄物をどう処理するかは後回しにして、目先の「おカネ」を優先して開発を進めたわけです。科学の力を信じるなら、放射性廃棄物を無害化することはいつの日かできるのではと期待はしますが、現在はできません。原子力を発明したとき、その放射性廃棄物を無害化する技術を確立することなく、その処理問題を後世に押し付けるしかないという事がわかった上で実用化したのは、特にそのことを一番知っていた科学者、そして「おカネ」を優先した企業の社長の判断は「モラル」に反する行為だったのではないでしょうか。
福島第一原発の事故の後、ドイツとスイスが期限を決めて原発を廃止することを決めました。日本における放射性廃棄物の処理問題を考えるためには、まずその危険なゴミの総量を確定する必要があります。原発が稼働している限りゴミは作り出されるので、いつまでに原発を全て停止するかを決める必要があります。そうすることにより、それまでに出る放射性廃棄物の量を計算して予想することができます。さて、現状では放射性廃棄物を無害化する技術はないので、僕が考える案としては、国有地の中で最も地震の影響が少ない場所に、地層処分場を作るというのが現実的ではないでしょうか。ただ、原子炉4基のフィンランドの処分場がオンカロの規模ですから、54基の原子炉を持つ日本はオンカロをいったいいくつ作ればいいのでしょうか。途方に暮れます。そして日本に地震の影響を10万年にわたって受ける可能性がない場所などあるのでしょうか。絶望的な気持ちになります。でも、この放射性廃棄物の処理の問題を後世に押し付けてよしとすることはできません。映画の中でも言われているように、原発に賛成、反対に関わらず、たとえ明日、世界から全ての原発が無くなり自然エネルギーで電力がまかなえるという夢がかなったとしても、放射性廃棄物は残るのです。この映画を観終わった後、日本の現状を考えると絶望するのはたやすいことです。しかし、絶望したままでは問題を先送りするのと同じです。
まだ間に合います、未来に生きる今の子供たちを想い、「モラル」を「おカネ」より優先するのです。それがどんなに莫大な額になろうとも原子力を利用してきた私たちの責任で、この時代にけりをつけるしかありません。日本に住む私たちにとって、この映画が、放射性廃棄物処理の問題を先送りする事なく、思考停止することなく、思考放棄することなく、この時代に解決するのだという「覚悟」を持つきっかけになればと思います。
浅井隆(アップリンク社長) 2011年6月14日
≪映画「100,000年後の安全」≫ 原発から生まれる放射性廃棄物の危険について~フィンランドの場合~
■ 原題:INTO ETERNITY
■ 監督:マイケル・マドセン ■ 出演:マイケル・マドセン
■ 2009年 デンマーク/フィンランド/スウェーデン/イタリア合作
■ 75min ■ 言語:English ■ 提供:アップリンク
2010年 パリ国際環境映画祭グランプリ
2010年 アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭・最優秀グリーン・ドキュメンタリー賞
2010年 コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭・有望監督賞
2010年 ノルディック・パノラマ最優秀ドキュメンタリー賞受賞
【映画『100,000年後の安全』公式サイト】
http://www.uplink.co.jp/100000/
【「アップリンク」(東京・渋谷)】
http://www.uplink.co.jp/factory/log/003924.php
【映画『100,000年後の安全』予告編】
http://www.youtube.com/watch?v=K7S7LfBlLgg
http://www.youtube.com/watch?v=HCdp_uHZ8e4
※NHK BS「世界のドキュメンタリー」…「地下深く永遠に~核廃棄物10万年の危険」
…2010年 国際環境映画祭(パリ)グランプリ受賞
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/110216.html
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【浜松市民映画館『シネマイーラ』(中区田町)】
http://www.cinemae-ra.jp/
※映画『100,000年後の安全』(2009年)
http://www.uplink.co.jp/100000/
※映画『ミツバチの羽音と地球の回転』(2009年)
http://888earth.net/index.html
※映画『祝(ほうり)の島』(2010年)
http://www.hourinoshima.com/
※小出教授『10万年先まで危険が続く...核廃棄物の現実』
http://www.youtube.com/watch?v=UhWeIC0NGIs
※NHK BS 第4回 もう一度見たい!世界のドキュメンタリー 特別週 検証原子力発電
http://www.nhk.or.jp/wdoc/yotei/index.html
※「終わらない悪夢」(前編)
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/110516.html
※「終わらない悪夢」(後編)
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/110517.html
※映画『六ヶ所村ラプソディー』
http://www.rokkasho-rhapsody.com/
【クラフトワーク『放射能』】
http://www.youtube.com/watch?v=eaScyfSHc-Y&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=kXD6Gtinvbc&feature=related