映像で観る“渋さ”史でした。

放課後倶楽部

2023年05月14日 17:04

映像で観る“渋さ”史でした。

先日、新宿のミニシアター『ケイズシネマ』で上映されていた映画を観てきました。それは日本が世界に誇るフリージャズ集団『渋さ知らズ』オーケストラの新作ドキュメンタリー『NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇』(佐藤訪米監督/2022年)という素敵な作品でした。
事の起こりは、今年2月中旬に久しぶりに洗足池の『笛吹』たこ焼き屋さんを訪問した時に店主の伊郷さんから「そういえば、“渋さ”の新しい映画が4月から劇場公開されるんじゃないのかなぁ~」と耳にしたことでした。「これは随分と楽しみな情報を聞かせてもらったなぁ。今日はたこ焼きを食べに来て本当に良かった良かった。得したわ。うっかり見逃すところだったわ」と思って帰宅したのを覚えています。

“渋さ”との出会いは、ある時CDショップで見かけた彼らの衝撃的な映像に「なんじゃこれは!」と思わず足を止めたことでした。キャバレーのダンサーのようなド派手なおねえちゃんたちや白塗りの舞踏やアングラ劇役者のような方々を従えた百姓一揆のようなカオスそのものの集団でした。総勢30名くらいいそうなビックバンドのブラスの愉悦と音圧といい、そこには間違いなくロックや昭和歌謡のフレーバーもあり、「キャバクラ祇園の鐘が鳴る/諸行無常のビキニちゃん/おごれる人はおごってよ/ただの春巻きタンタンメン」で始まる鬼才・林周一(演劇集団「風煉ダンス」)さんのナンセンスで意味不明の歌詞の心地よさについフラフラとCD『渋旗』と、その横に置かれていた陣野俊史著の分厚い『渋さ知らズ』本を嬉々として買って帰ったのでした。

今回の映画は、まるでその時にむさぼり読んだ陣野さん著の〝渋さ”本を映像と音楽で辿る旅のようでもありました。
『渋さ知らズ』黎明期の秘史を古株メンバーの証言で再構築した感じとでもいうのでしょうか。
まっ、ただの1渋さファンとしては映画館の暗がりの中で見たことのある方々がスクリーンに登場する度に「あっ、伊郷さん出た♪永遠の修学旅行生姿で“風煉”の林さん出た♪この写真の1人は『ニワコヤ』の笠原さんだよね。おおっ、辰巳さんのトランペットの音が綺麗に抜けてるわ♪届く届く♪この後ろ姿はギターのファン・テイルさんだよね♪ありゃ、『発見の会』の飯田さんだね♪反町さんも居たよね♪」と横の女房と無邪気に大喜びしていただけなんですけどね(笑)。後ろの席に作中で演奏や歌も含めて素晴らしいナビゲーター役を務められていた元メンバーの佐々木彩子さんが着席されていた気配に少し緊張気味だったかもしれない“たこ焼き屋の客”の私たちでした(笑)
とにかく「天衣無縫の…」「疾風怒濤の…」「アングラの華」「フリージャズ界の梁山泊」「アングラの帝王」と〝渋さ〟を形容する言葉は色々ありますが、唯一無比の音楽集団『渋さ知らズ』オーケストラの新しい記録映画が完成したことに続編への期待も込めて拍手喝采です。

映画の中で2019年の京都大学西部講堂での「渋さ知らズオーケストラ~天幕講堂渋さ西部大祭」での映像もありましたが、この“渋さ”結成30周年の年の全国ツアーでは私たちは11月23日(土)の研究学園都市駅前の公園での「天幕」舞台つくば公演になんとか滑り込みで体験することが出来ました。野外に竹と布で組んだ巨大なライブ会場が蜃気楼のように立ち上がっていました。これが〝渋さ〟の天幕公演とその怒涛の人力に感動しました。アングラ劇団のテント公演を彷彿とさせるものがありました。外にはミュージシャンの名前を書いた幟旗が翻るのも、劇団が役者名を掲げるのと似ていました。

この作品の東京での公開は新宿では4月28日(奇しくも俺の64歳の誕生日やん!)で一旦終了のようですが、続いて映画は名古屋、大阪、京都、福岡と続いて全国行脚の旅が続くそうですからお近くの劇場で是非!

月並みな言葉で申し訳ありませんが、『渋さ知らズ』最高です。東日本大震災の2011年に福島市内の野球場でのライブで「本多工務店のテーマ」をららららららぁと大声で歌いながら涙がとめどなく頬を流れ落ちたことを懐かしく思い出しました。アングラの持つ暴力性の超克と音楽によるより良き世界の構築と実現に向かう果敢で雄々しき姿を見続け追っかけていきたいと思います。これからも、もっと自由にやっちゃってください。「渋さ知らズ」という場と砦の上に我らの世界を…かな?(笑)俺も例えが旧いよね。

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▼映画『NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地篇』
https://shibusa-bangaichi.brighthorse-film.com/#modal

▼渋さ知らズ オフィシャルサイト
https://www.shibusa-shirazu.com/
▼『渋さ知らズ』(陣野俊史/河出書房新社/2005年)
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309268392/
▼「地底レコード」 渋さ知らズオーケストラ
http://chitei-records.jp/.../cdlist/shibusa-shirazu/page/2
▼伊達政保「現在につづく昭和40年代激動文化」(汎世書房/2012年)
https://twitter.com/datemasayasu
▼たこ焼き『笛吹』(大田区洗足池)
http://takoyaki.hungry.jp/


































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