初日とあって支配人がマイクを持って…。

初日とあって支配人がマイクを持って…。岩波ホールには本編上映前の10~15分くらいの次回作の長い宣伝時間はありません。ほんの数分程度です。
隙間なく埋まった満席の中、マイクを手に上品な女性が客席の前に立ちました。
支配人の岩波律子さんです。
初日とあってか支配人自らがマイクを手に客の前でお礼の挨拶なんて、なかなかきめ細かい配慮だと思いました。
客席200ばかりの小さな映画館ですが、常に良質の作品を提供してくれます。
アンジェイ・ワイダ作品も今回の「カティンの森」(2007年)で、1980年にロードショーした同監督の「大理石の男」から数えて通算13作目にあたるそうです。
つまり裏返せば、ワイダ作品は岩波ホールでしか観られないに等しいわけです。
これだけ世界的名声のある社会派監督の作品なのに、やはり大衆の興味の大半はハリウッドの娯楽大作に向いているのか、巨費を投じたメディアミックスな過剰な宣伝によって無意識のうちに向けさせられているんだろうな。
残念なことです。

僕たちの学生時代の頃は、お茶の水の「アテネフランセ」では月1くらいでは代表的な初期のワイダ作品の「灰とダイヤモンド」と「地下水道」くらいは半ば定期的にかかっていた気もするし、僕が浪人中の1978年には多目的ホールの「ジァンジァン」(渋谷と名古屋の今池交差点にもありました…)でもワイダ作品(「すべて売り物」)の公開をしていた頃もあったんだけどね。

支配人に続いてマイクを手にした女性は、東京国際女性映画祭のプロデューサーの大竹洋子さんでした。
数時間前にポーランドのクラクフから成田へ戻ってきた、その足で岩波ホールに手荷物とお土産を下げて到着したそうです。
ロビーでお見かけした時に、ワイダ監督の話をされていたので、「誰だろう?」と不思議に思っていました。

「つい先ほどまでワイダ監督と一緒にいたんですよ」って大竹さんの話を聞けたのはラッキーでした。
「なんで(そんなに慌てて日本に帰るんだ?)」といぶかる監督に、「何を言ってるんですか?貴方の作品の初日ですよ」と切り返すと、「それは大変だ。早く帰りなさい。くれぐれも日本の皆さんらよろしく」といって、お土産にお菓子をいっぱい持たせて送り出してくれたそうです。
今回の岩波ホールでの公開が10週間と告げると、監督は「えっ、10週間(も)!?」と目を剥いて驚いていたそうてず。
そして、余程日本での評価が気になるのか、「書評(映画評?)とか、日本で出たものは全て(ポーランドに)送るように」と大竹さんに託したそうです。

また、今回の作品が17年かけたものであることや、30本目のシナリオでようやく納得のいくシナリオに出会い制作されたなんて裏話も紹介してもらえました。
面白かったのは現地でのあるパーティーの席上でのワレサ元大統領と大竹さんの会話でした。
ワレサといえば、僕たちも学生時代に熱烈に支持したポーランド自主管理労組「連帯」運動の委員長でした。
ワレサ元大統領は大竹さんに「なんで、日本人はワイダばかり好きなんだ?俺は日本で人気はないのか?」と冗談混じりに嘆いていたそうです(笑)。

映画「カティンの森」の感想は後日に譲りますが、ロケ地となった古都クラクフの町並みが綺麗に残っていたのには驚きました。
ポーランドといえばワルシャワ蜂起のイメージもあるので、大戦末期には灰塵に帰した都市も多いとばかり思っていたら、奇蹟的にクラクフは戦災を受けなかったことで中世からの街並みを今に残しているそうです。
しかもワルシャワに首都が移る前の首都だったそうですしね。
ずっとワルシャワが首都だとばかり思っていたから、これは知らなかったなぁ~(笑)。(^.^)

それにしても支配人が挨拶したり、初日にポーランドから監督のメッセージを抱えて映画プロデューサーが帰国してお話してくれるなんて、いかにも岩波ホールらしい真摯な態度に感激です。

【映画「カティンの森」公式HP】http://katyn-movie.com/pc/
【岩波ホール】http://www.iwanami-hall.com/
【アテネフランセ文化センター】http://www.athenee.net/culturalcenter/
【東京国際女性映画祭】http://www.iwff.jp/
【東京国際映画祭】http://www.tiff-jp.net/ja/
【アンジェイ・ワイダと「カティンの森」報道】
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=1Ryenfa7RjM&feature=related
【NHK・ETV特集「祖国ポーランドを撮り続けた男」2008年6月】
http://www.nhk.or.jp/etv21c/backnum/index.html
【映画「灰とダイヤモンド」】
http://www.youtube.com/watch?v=ZuqPOluaJS8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Ffk65gyrj5A&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=wwA5vNVI2Rc&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=_SVLVBWbEbU&feature=related
【映画「地下水道」】
http://www.youtube.com/watch?v=kphkbgBEgdg&feature=related
【映画「大理石の男」(1976年)】
http://www.youtube.com/watch?v=odIXbPs4BRk
【アンジェイ・ワイダ監督】http://www.wajda.pl/en/Default.html
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初日とあって支配人がマイクを持って…。私(小池)も図々しく座談会に登場させてもらったノンフィクション系新雑誌「g2(ジーツー)」(講談社)創刊第2号がいよいよ12月5日に書店に並びました。(^.^)
よろしかったら、124ページをちょっと開いて見てみてくださいね♪(^.^)

【ノンフィクション新機軸メディア「G2」(講談社)サイト】
http://g2.kodansha.co.jp/


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