私もこの映画に衝撃を受けて取り憑かれてます♪

私もこの映画に衝撃を受けて取り憑かれてます♪

しかし第一線の美術批評家って視点も分析も大したもんだわ♪
俺も「この空の花」は2回観たけど「なんかいいかも♪すごいかも♪」しか感想が浮かんでこないんだよね(笑)。

▽[映画][資料]この空の花
2012年5月29日DOMMUNE「『この空の花』を語る」より
http://d.hatena.ne.jp/lessthanzero/mobile?guid=on&date=20120816§ion=1345098187

大林宣彦監督

はじめまして。私は美術評論家の椹木野衣と申します。
本日は監督に直接お目にかかってお話できる機会をいただきながら、どうしてもはずせない用事があり、参加することができませんでした。ご容赦ください。

私は監督の新作『この空の花』を拝見して、大変な驚きと衝撃をうけ、それ以来連日ツイッターでこの映画についての自分の考えを発信し続けています。
ひとりでも多くの方に、この映画を目にする機会を持って欲しいと強く願ったからです。日本はあの3月11日以来、大変な災害の渦中にあります。私も数度にわたり被災地を訪ねましたが、福島第一原子力発電所の事故に至ってはこれからどうなるのか目処さえたっていない状況です。
そうした背景もあったからなのでしょう。
けれども、それだけではなさそうなのです。

何がそうさせたかわからないのですが、とにかくこの映画で描かれた夢とも現実ともつかない、天国と地獄が交じり合ったような世界は私の心の奥底に入り込み、普通に映画を観て楽しんだり、話し合ったり、論じたり、という回路をあっけなく壊してしまいました。
それでも私は、それがなんなのかについて今日も考え続けています。
そのため、未見であった大林監督の近作も一作ずつ遡りながら観直しているところです。きっかけになった『この空の花』に始まり、『その日の前に』『転校生 さよならあなた』『22才の別れ 葉見ず花見ず物語』までをちょうど一昨日見終えたところです。そしてそのなかで、これらの作品を通じて大林監督が「転校生」から「校」の文字を取った「転生」の問題を一貫して扱っていることに気づきました。

私はこの「転生」という文字をずっと眺めているうち、ここでの「転生」とは、一輪車に乗り、輪を転がすあの少女の本当であればありえたはずの生が、震災下に映画の姿を借りて「転生」した姿なのだと思い当たりました。
そしてそれもまたひとつの花の形なのだと。実際、大林監督の映画にはいろいろな「花」が登場します。花火を扱った『この空の花』で元木花の乗る一輪車はまるで一輪の花のようでもあります。『22才の別れ』では花は花鈴(かりん)という女性の名にうつされて、そこでは彼岸花が咲き乱れます。『その日の前に』で「その日」を迎えたとしこの前に届けられた花はたんぽぽの綿帽子でした。それは打ち上げ花火の丸いかたちを思い起こさせます。こうして、すべての花は「転生」するように映画の中を転がり、互いにつながっています。

しかしながら同時に、花とは儚い命を持つものです。永遠の生命をつなぐために花は必ず枯れなければなりません。
花火もそうです。打ち上げ花火が美しいのは決してそれが爆発するからでは無いと思うのです。どんな大きな花火も華麗に花開いたあとは、すっと虚空に消えていく。
そこにこそ花火の美しさがあるように思います。

そう考えると、元木花という少女そのものが、花火のように儚く夢のような存在で、しかしだからこそ見るものに永遠の命を予感させる、闇の中に咲いた一輪の花だと思うのです。
そう書いてみて、私は映画とは、ちょうど打ち上げ花火のような存在であると思い当たりました。
映画は光と影からなる幻であり、実体はありません。しかし光と影で描かれた、この映画という花火が、場合によっては現実を超えて観る人の心に焼きつき、その人の生き方を根本から変えてしまうことさえあります。
『この空の花』に私はそのような力を感じました。
この映画そのものが、このうえなく力強い打ち上げ花火であり、それをみんなで干渉する映画館の場は一種の国民的花火大会だと空想します。

長くなってしまいました。そろそろ筆をおかなければなりません。
いま僕の願いはこの花火大会を劇場を埋め尽くす大勢の人と一緒に鑑賞することです。いわば河川敷を埋め尽くす本当の花火大会です。そのとき『この空の花』はまだ私たちにみせていない、もうひとつのまったく別の顔をみせてくれると確信しているからです。
私自身もう一度この映画を劇場で観るつもりでいます。できれば、有楽町すばる座の最終日に足を運んで多くのかたがたと『この空の花』がいま一度スクリーンに打ち上げられ、爆発し、散りゆき、この葉の無い花が落ちた先から数え切れないほど多くの命が転生してくることを、強く強く希望しています。
大林監督、『この空の花』をスクリーンに届けてくださり本当にありがとうございます。またお目にかかれる機会を願っています。

2012年5月29日   椹木野衣*1

2012年5月29日DOMMUNE「『この空の花』を語る」より
注)ustに来ることが出来なかった椹木野衣の手紙。大林千茱萸の朗読から書き起こした。その後椹木はfree dommuneで(元木花役)猪俣南とともに初めて生放送に出演し、大林宣彦と共演している


※大林宣彦監督作品「この空の花 長岡花火物語」(2011年)公式サイト
http://www.konosoranohana.jp/

※映画「この空の花 長岡花火物語」予告編 120秒バージョン
http://www.youtube.com/watch?v=CivwjE-pHJY&feature=player_embedded

※【PV】So long ! ダイジェスト映像 / AKB48[公式]
http://www.youtube.com/watch?v=LeLsjgbCoMI


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