信濃毎日新聞からの転載♪

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※ドイツ文学翻訳家・池田香代子さんのブログ:11月27日編
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51966844.html

【転載】憲法骨抜きの手口

特定秘密保護法は、きのう衆議院を通過しました。異例で強引な議事運営だったこと、ネットユーザーはSNSや国会中継をつうじて、リアルタイムで追っていました。いてもたってもいられずに、誰が呼びかけたでもなく、国会正門前に集まってアピールした人びともいました。この動画には、スーツ姿の、お勤め帰りが一目瞭然の方も写っています。

人びとの大多数が反対や懸念を表明している法案なら、国会はルールに沿ってじっくりと議論すべきです。このような、なにごとも数の力を前面に押し出して国会運営をする政府与党に、これから先も国政を託すことが、ほんとうに心配になってきました。

衆議院でこれだけ揉めると、参議院の審議にはより多くの監視の目が注がれるでしょう。同じような乱暴なやり方は許されないでしょう。反対の声はますます勢いを増しています。

おととい深夜に依頼があって、きょうの朝刊に載った信濃毎日新聞への寄稿を、新聞社のご好意で転載します。

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特定秘密保護法案が強行採決された衆議院特別委員会をインターネット中継で見ながら、これを書いている。そして、7月に麻生副総理が口にした「ナチスの手口」とはこれだったのだ、との思いを強くした。
 「(ドイツの)ワイマール憲法がいつの間にかナチス憲法に変わった」というのは、麻生副総理の世迷い言だ。当時もっとも民主主義的だったこの憲法は、全権委任法の強引な成立で空文化されたのだ。改憲を回避し、からめ手から憲法を骨抜きにする。これが、「ナチスの手口」であり、安倍政権はここから「学んだ」と思えてならない。

 国家安全保障会議に権力を集中させ、解釈改憲で集団的自衛権行使を容認し、歴史教科書は政府見解に沿うものにする。テレビメディアは、例えばNHK経営委員会の人事権行使、あるいは首相出演の許諾といった飴と鞭で手なずける。

 そして特定秘密保護法で、情報をこれまで以上に非開示にして私たちの判断を不可能にする。公文書は実質、今まで通り好きなだけ廃棄できる可能性を残しつつ、「特定秘密」に手を伸ばす市民を取り締まり、同時に市民の個人情報を膨大に収集する。共謀罪を導入し、自首して自分以外の者の情報を提供すれば免罪とする。私たち市民に、相互監視の網をかけるのだ。これを実際に差配するのは官僚機構であり、同法は政低官高をますます堅固にするだろう。

 国会の審議も裁判も、「特定秘密」の壁にぶち当たれば、そこで頓挫する。「特定秘密」が開示されるとしても、それは密室であり、私たちは決定事項を伝えられるに過ぎない。
 あとは、国家安全保障基本法などの「戦争手続き法」を成立させさえすれば、国民に異論を許さない好戦的な国家はできあがる。国民主権と人権と平和主義を3本柱とする日本国憲法には、指一本触れずに。改憲はその後、おもむろにやる。

 同法案は、他国への特定秘密の提供を可能にしている。たとえば、公安警察がイスラム教徒の個人情報をアメリカのFBIの依頼で収集したといわれる違法性の高い行為は、2010年に情報流出で発覚した。それを今後は合法とするのだ。戦前の治安維持法と比較される同法案だが、治安維持法にすらこのような規定はなかった。

 この法案が、夏の参議院選挙で衆参の「ねじれ」を解消し、昨年末の衆議院選挙で与党が圧倒的多数を得た国会で審議されていることを、私たちは覚えておく。1票の格差裁判で最高裁が「違憲状態」、つまり、歯がゆい言い方ながらその身分を「違憲」とした衆議院議員たちが審議しているのだ。

 正統性に疑義をつきつけられた国会であればなおのこと、政府与党は少数意見を汲むという民主主義の本義に立ち返り、慎重な審議を心がけるべきだが、現実はそうではない。民主主義はギリシャの古代から多数派の専横を否定しているのに、国会運営は横暴の一言に尽きる。審議過程の形骸化、低調な議論、内閣や議員の不勉強も目に余る。たとえば、安全保障と知る権利の国際基準である「ツワネ原則」を、安倍首相は私的なものと一蹴したが、政府が放射線防護にその提言を採用しているICRP(国際放射線防護委員会)も私的な民間団体だ。

 私たちは、政府与党の人びとの発言を覚えておく。万一このまま法案が成立し、その後で彼らの真意が判明したり、空約束だったことが明らかになった時、私たちはどんなに悲惨な状況に立ち至っているかを思うと、暗澹としてくるのだが。

 国連人権理事会は、同法案への懸念を表明した。ほかにも内外から批判が寄せられている。こんな恥ずかしいことが、過去あったろうか。私も参加している世界平和アピール七人委員会も、同法案の廃案を求めた。問題点は網羅したと自負している。ぜひサイトを訪れ、アピールを読んでほしい。

※世界アピール七人委員会  http://worldpeace7.jp/

※11.26秘密保護法反対抗議 - 国会正門前
http://www.youtube.com/watch?v=ed7SgPMtZ1M


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