
ややご年配や僕らの世代ならヤコペッティという監督名や、彼を一躍有名にした『世界残酷物語』(1961年)というモンド映画の存在はご存知だと思います。後に「モンド映画」と総称されるやや演出過剰な眉唾物の嫌いもある一連のドキュメンタリーっぽい作品群のジャンルを生んだのがヤコペッティです。
美しい映画音楽(『モア』)が流れる『世界残酷物語』は子供の頃にテレビの洋画劇場でよく見た作品のひとつです。
真偽の程はさておきそれはそれなりに子供心にはショッキングな映像と話でした。
そのヤコペッティの新作が公開されると聞き、中学時代に親友のT君と映画館に行ったのが多分、中1か中2の頃の『ヤコペッティの残酷大陸』(1971年)でした。
それまでのドキュメンタリーチックな作品を期待していったら、まったく予想と違う劇映画で、黒人奴隷の姿をこれでもかこれでもかと描いていて、もう画面からアフリカからアメリカへの奴隷船に繋がれた彼らの汗どころか糞尿の匂いまで漂ってきそうな衝撃を受けたのは覚えています。
子供心なりにアメリカの暗部を嗅いだ気がします。
高校に入って、やっぱり親友のT君と観に行ったのが次作『ヤコペッティの大残酷』(1974年)でした。高校1年の時だったかなぁ?
これがまたまた予想を裏切る作品で、やたらシュールで美しい映像とエッチなシーンばかりで見終わった時は呆気に取られて「アレは一体何なんだったんだ・・・」と思ったものでした。
あれから約40年が経ちましたが『ヤコペッティの大残酷』はなかなかDVD化されることもなく再び観る機会に恵まれませんでした。
まぁ、当時は酷評されていて、失敗作とか駄作とかの扱いでしたしね。
最近、遂にその幻の作品が日本初ソフト化されたので嬉々として早速購入したら、しっかり近所のレンタル屋にも並んでいました(笑)。
改めて40年ぶりに触れた作品でしたが、そのハチャメチャさはどこか“ユーゴの鬼才”エミール・クストリッツァ監督の『アンダーグラウンド』や『白猫黒猫』にも相通ずるような気もして「思っていたほど悪くないじゃん♪」の印象でした。
痛烈なまではもいかないけれど、今観てみてもそこそこの批評性や風刺もアイロニーも効いていてこれが実になかなか面白いんだわ。
もしかたしらクストリッツァ監督も若い頃にこの作品を観たことがあったんじゃないのかと思えるくらいでした(笑)。
考えてみたらヤコペッティ監督は第二次大戦にも負け戦のイタリア軍に従軍しているので、戦争映画で見た英雄的な姿と戦争の現実のギャップは身にしみて体験しているわけですしね。当然、若い時はファシスト青年だったと思うしね。
まぁ、ヤコペッティの世界観は両論併記的な狡さというか弱さもあって、そこに鮮明な旗頭は存在しないけどね。
「全部ジョークさ♪」みたいないい加減さや軽さがいいよね。♪

『ヤコペッティの大残酷』・・・話のタネにレンタル店で見かけたら試しに観てみても損はないかも♪(笑)
最初っからB級と思って期待しないで観たら、期待よりは良い評価につながると思うよ(笑)。
この世界は僕たちが想像している以上に醜悪で無残で無慈悲で苛酷で酷いものだと思うからね。

▼『ヤコペッティの大残酷 特別版』 DVD用トレイラー MONDO CANDIDO
https://www.youtube.com/watch?v=eMIYM2wnTfY
▼高橋ヨシキの「ヤコペッティの残酷大陸」特集 シネマストリップ
https://www.youtube.com/watch?v=qTt9QUpPOug
▼世界残酷物語MONDO CANE Trailer (englisch)
https://www.youtube.com/watch?v=VKw8bJcCF3Y